続・政略結婚は純愛のように
初めての喧嘩
　由梨が驚異的な集中力でもって仕事を片付けた結果、定時前にはやるべきことはすっかり終わった。
　一課の会議はまだ続いていたが、それだけを理由に残業をする必要はない。
　さっさと帰って体調を整えろと黒瀬にどやされて由梨は早々に加賀家に帰宅した。
　いつもは秋元が暖かくして待っている屋敷が暗い。
　そういえば今日は秋元が休暇をとっていていないのだと気がついて由梨は憂うつな気持ちになった。
　なにもしないで一人でいるとまた良くない考えが暴れ出すのは目に見えていた。
　暇なときは、録画しておいた旅番組を見るのがささやかな由梨の楽しみだけれど、今日はそんな気分にはなれない。
　葉山マリアと一課の面々は会議のあと懇親会が予定されているはずで隆之も参加するだろう。
　昼間の出来事から完全に抜け出せていないまま隆之と顔を合わせるのは少し怖い。
　けれど彼があの美しくて魅力的なマリアと過ごしているのかと思うと、それはそれで胸がかき乱された。
< 92 / 182 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop