続・政略結婚は純愛のように

　リビングの方でガチャガチャと誰かが帰ってきた気配がして由梨は目を覚ました。
　いつのまにか眠ってしまっていたようだ。
　暖房もなにもついていない寝室は寒く由梨はぶるりと震える。
　起き上がって鞄から携帯をだすと午前零時を回ったところだった。
　少し開いた廊下へ続くドアから光が漏れている。
　隆之が帰ってきたのかと思って振り返ったとき、彼が入ってきた。

「あ…お帰りなさい。」

隆之は電気を付けなかったけれど、廊下からの光だけでも十分に眩しくて由梨は目を細める。
　当然由梨は先に寝ていると思っていたのだろう。隆之は少し驚いた様子で立ち尽くしている。

「…起きてたのか。」

　隆之はそう言って電気をつけた。
　そして目を擦る由梨を明るいところで改めて見てもう一度驚いたように動きを止めた。
　何せ、由梨は帰ってきた時のスーツのままだ。
　今日は隆之は企画課にいたのだから由梨が定時で帰ったのを知っている可能性が高い。
　こんな時間まで何をしていたのかと言いたげな隆之の視線を感じて由梨は目を逸らした。

「…帰ってきて、そのまま寝ちゃったみたい。」