続・政略結婚は純愛のように
「いやっ!!」

力いっぱい隆之を押し返すと、力で負けたというよりも不意を突かれたように隆之が由梨を離した。
由梨は隆之を睨む。

「隆之さんには関係ありません!!」

 隆之がアーモンド色の瞳を見開いた。
 酷い言葉だ。
 けれど本当のことだと由梨は思う。
 隆之は自分の責任をいつも誠実にまっとうしているにすぎない。
 由梨がそんな彼にふさわしくないと誹られるのは由梨の問題でしかないのだ。
 葉山マリアのような美しさと実力を兼ね備えた女性であったならばそんなことは起こらないのだろうから。
 由梨がなんと言われているかなど彼に訴えてたところで何にもならない。
 それどころか自分がどれほど彼にふさわしくないかを一番聞かれたくない人にさらけ出すことになるのだ。
 そんなこと絶対に嫌だった。
 惨めで弱虫でも由梨にだってプライドはある。

「由梨…!」

隆之が再び由梨を抱こうと手を伸ばすのを払い除けて由梨は立ち上がった。

「何にもないって言ってるでしょう!」
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