君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう


今日も特に得るものも無く進路資料室を出た俺は、テストの最低点で争っている昂生と妃菜を収集して、凜の病院に向かった。


この帰り道に凜が居なくなって数週間。

蒼が居なくなって十数日。


残ったのは、妃菜と、更にほぼ同時期に受験を終えた昂生、まだ決まってもない目標を求め続ける俺。

・・・五人で歩いていた頃が懐かしい。


こうしてみんながそれぞれの道を歩き始めて、いずれ別れるときが来るんだろうな。

そんなことを考えたら、少し切ない。




「・・・あ、みんな、また来てくれた」

「凜~、昂生に生物の点数負けた!」

「えー、もっと頑張ってよー(笑)」



凜の笑顔は、いつ見ても変わらない。


この無機質な白い部屋も、ベッドに置いてあるぬいぐるみも、窓から見える隣町の森も、全部。


・・・変わらなければいいのに。



「きぃくん、進路は決まった?」

「んー、まだ。考えすぎて頭おかしくなるかも」

「あはっ、そんなに?・・・うーん、きぃくんは何が向いてるかなぁ・・・」



メールでも電話でも、俺は凜に進路の相談をしてばっかり。

・・・いや、正確には、凜がすごく聞いてくる。


何がしたいとか、何に憧れているとか。


俺よりも真剣に考えてくれている気がする。



< 119 / 220 >

この作品をシェア

pagetop