君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
「・・・俺は医者にはならない」
震える声でようやく発せたのは、それだった。
誰かの生死を左右するような職に就いてまともに生きていける気はしないし、第一、学力的にも無謀でしかない。
幼かったあの頃に比べたら、大きな成長だった気がする。
俺に興味を示さないこの親に向かって、自分の意見を述べることが。
・・・だけどそんなこと、この男には関係なかった。
俺の言葉を聞いたかと思えば、その手を勢いよくテーブルに叩きつけ、その衝撃でコップが倒れる。
「だったらお前は何になるんだ。なんの勉強をしてるんだ」
「ちょっ、・・・やめろっ」
殺意でも込められているかのような、無感情な声。
男は躊躇うことなく俺の持っていたカバンに手を伸ばし、奪い、教材を漁り始めた。