君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう


食料を買うため外に出れば、もうすっかり冷たくなった風が全身を撫でる。


今日は何日だろうと思いスマホを開けば、そこには12月の文字。


・・・12月は、凜と妃菜の誕生日だったっけ。


18歳になる凜の病気は、すでに治っていて・・・

この先俺の居ない世界で、俺とは別々のところで、幸せに生きていける。


そんなことを勝手に考えて、勝手に安心する俺は、本当にダメなやつ。


誰にも会わなくなった俺は、凜がこの世界から居なくなるという現実から離れたんだ。

現実味がない。

あれは全部夢だったんじゃないかって、ふと思う。


吹き荒れるこの冷たい風だけが現実で、あたたかいあの時間は、幻。


・・・俺は何をしていたんだろう。


あの日、全てを失った俺の中に残ったのは、嫌悪感と罪悪感。



ここにあったみんなとの思い出は、あの笑顔は、声は・・・


その真っ黒い感情に包まれ、消えかけていた。



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