君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
そして翌日。
予定通りわたしは退院を迎えて、妃菜と一緒にタクシーで家まで帰った。
久しぶりの家は、なんだか綺麗になっていて・・・生活感が、無かった。
「暇だったから片付けしたの」って妃菜は言うけど、わたしのお見舞いに来てる時間が長かったから、家に居なかったの・・・知ってる。
「ただいま」
「おかえり、凜。疲れてない?大丈夫なら、着替えといで」
「全然大丈夫。早くきぃくんに会いたい」
きぃくんの絵を見たら、元気になれる気がするから。
また、あの声で・・・凜って、呼んでほしい。
「・・・好きなの?優人のこと」
「ん?・・・うん、好きだよ。優しいもん」
「・・・優しいかな、あれ」
「優しいのー」
「凜って物好きなんだね」
「ひどい!」
きぃくん、好き。
一人の人間として、好き。
妃菜も昂くんも蒼くんも、みんな同じように好き。
だけど、不器用で・・・でもすごく優しくて、暖かいきぃくんが、いちばん好き。
あとどれくらいかも分からない短い命の中で、退院後の少しの疲れなんか気にしてられない。
きぃくんに会っても恥ずかしくないような服に着替えて、お絵描き帳、用意して・・・彼が来るのを待った。