君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう

わたしの手も、きぃくんと同じように冷たいんだろうな。


だけど、握りしめてるから。此処に居るって分かるから、大丈夫だと思えた。



「小さい頃もたくさん手術して、入院してたの。小学校二年生の頃にお母さんとお父さんが離婚して、妃菜と離れ離れになって・・・わたしはお父さんの方に行ったんだけどね」


思い出すだけで苦しくて、ただただ辛い過去。

すごく悲しくて泣きそうになる過去。


口を噤むわたしの手を、きぃくんがぎゅっと握った。

・・・あ、なんか、珍しい。

そう思いながら、わたしは言葉を続ける。



_____少しして、お父さんが再婚した。


だけどその相手の人は、わたしのことをあまり好きじゃなかったと思う。

一人の時に暴言を吐かれたり、わたしにだけ当たりが強かったり。


だからわたしは大人の女の人が少し怖い。

それが見知らぬ他人でも、体が拒む。


そんな中、中学生になって、・・・わたしのお父さんは事故で亡くなった。



「それからは妃菜とお母さんと三人暮らしで・・・今年の冬にお母さんが出て行っちゃったから、今は妃菜と二人なの」


『ごめんね。今までありがとう』


それだけ書いてある手紙を置いて、お母さんは居なくなった。

わたしの治療費を払ってくれているのは、お母さんのお姉さん。


お母さんは、多分・・・疲れたんだと思う。

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