君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
いつの間にか離れた自分の手のひらを見つめた。
凜は、生きている。
俺は、凜の体温を感じられる。
・・・初めて凜を見た日を、思い出した。
怯え切った冷たい目。
震える体。
・・・冷たい手のひら。
俺に触れられて、昂生たちに絡まれて、最初は警戒の中戸惑っていたあの子はもう居ない。
昂生と妃菜に挟まれて、楽しそうに笑っている。
「優くんは知ってるんだよね」
そんな三人の後ろを歩く俺の隣で、ずっと黙っていた蒼が口を開いた。
「・・・え?何を」
「凜ちゃんの何か。あの子、絶対何かを抱えてるんだと思ってる。それが何か俺は知らないし、多分知れる時も来ないんだろうけど」
・・・あぁ、そうだ。蒼はこういう人だった。
昔から何でもすぐに察する人。だけどそれは何かを追求しない人。
蒼だけじゃない。
昂生だって、きっと薄々気付いてる。
だけど、俺は何も言えない。
自分の口から言うことになったとしても、そんなに恐ろしいことは絶対に言えないと思う。
「・・・知らないよ」
・・・ごめん。
知らない方が、幸せなことだって・・・ある。