君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
「・・・優人、ちょっと来て」
「ん?」
ベットサイドの椅子に座っていた妃菜が立ち上がって、無造作に俺の腕を掴み、そのまま病室を出た。
一体なんなんだ。
廊下に出て、俺の前に立ち尽くす妃菜の険悪な表情。
それに怖がる俺を前に、妃菜は改めて口を開いた。
「昨日、父親の女が会いに来た」
「・・・は?」
「白石の姓だったし、凜が怯えてたから多分そう。私は初めて見たけど、嫌な感じだった」
「何しに来たの」
「お見舞いとか言ってたけど、分かんないね」
"父親の女" って・・・まぁ、凜を罵倒してきた再婚相手っていう認識で合ってはいるだろうけど。
そこは詳しくは聞いていないから分からないけど、凜から言わせれば今更、って感じだろう。
会いたくも・・・なかったと思う。
他人の俺が思うのもあれだけど、凜はその女のせいで人を恐れるようになったんだ。
・・・だから、あの目。
俺たちと楽しそうに笑うようになった凜から、幸せを奪わないでくれ。
俺にはそう思うことしか出来ない。
「・・・このままあの人に会い続けたら、凜が何もかも諦める気がする」
『そしてまた、笑わなくなる』
その一言に、心臓が一つ、嫌な音を立てた。
・・・嫌だ。
そんなこと、俺は許さない。