君とわかれるその日まで、溢れるほどの愛を描こう
その他、今回の発作がすぐに治まったこと、明後日には退院すること・・・妃菜からひと通りの話を聞いて、再び病室に入った。
「あ。きぃくんもお絵描きする?」
「なんか俺死ぬほど絵下手なんだけど助けてくれない?」
・・・一見何ら変わりなく話しているようにも見えるけど、蒼と昂生の僅かな様子の変化に俺は気付いてしまう。
声の調子、そして表情。
だけど俺がそれに触れることは許されない。・・・というか、出来ない。
「いや・・・昂生が絵上手かったら変じゃん」
「何、変って!変ってひどくない?」
だから俺は、みんなが振る舞う "いつも通り" に応えなきゃいけない。
凜はテーブルに紙を広げ、紫色のペンを持って絵を描いている。
二人と話して、笑っている。
まだ、俺にその笑顔を向けてくれる。
そんな彼女に、俺の心は少しだけ救われた気がした。