雨の中消える君
「これ、全部入れといて。


勤務初日で悪いけど、私明日の昼まで来ないから、困ったら誰かに聞いて。」


そう言って渡されたリストには、


名前とか科とか電話番号とかが書かれていて、


入れといて、はおそらくさっき渡された院内用の携帯に全て登録しておけ、ということなのだろう。


「わかりました。」



「おはようございまーす。」

私服姿の男性が入ってきて

「あら、坊ちゃん。」


俺の隣の席の片岡先生が坊ちゃんと呼んだ相手は僕を見つけると


「あ、君が佐々木くん。


脳外の矢野祐也です。鹿島とは大学からの同期、よろしくね。」



「佐々木です、よろしくお願いします。」



「あ、何、それ鹿島のでしょ、お疲れ様。」



「あ、えっと、その、」

鹿島先生に渡されたリストを見つけた矢野先生に話しかけられて返答に困っていると、



「佐々木、矢野のことは無視していいから。矢野、行くよ。


それじゃあお疲れ様でした。」



そう言って鹿島先生は帰って行った。
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