scarlet

「何見惚れてんのー?」

ぼーっと龍を見ていたら、
その顔がもう目の前にあって


「な、なんでもないの
髪、綺麗だなって」


染めて傷んでいるはずなのにサラサラで
次々と髪の色が変わるのが面白いんだけど


「なんだ美桜、浮気か?」


「聖夜、いつの間に帰ってたの?」


ほんと今日、みんな私をいじめすぎだと思う


「さっき帰ってきた」


「そう、なんの用事だったの?」


そう聞くと、なんだか微妙な空気になって
触れてはいけなかったんだと悟る


「買いたいお菓子あるんだよねーー
今日の帰りは俺が送って行ってもいい?」


龍が気を利かせてくれたのか、
聖夜に許可を取ろうとする


「別に今、付き合ってるわけじゃないんだから。
聖夜も何も言わないわよ、ね?」


わかってる。時々私が踏み込もうとすると
その一線は越えさせてくれないこと
問題が何も解決していない事はわかってた

一年前に戻ったような錯覚は覚えるけど
根本的なことが何も変わってないんだから
どうしても溝は埋まらない

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