scarlet

「龍っ、」


騙された。
寝ていたのは紫苑ではなく龍で
漫画のように手に持っていた荷物全部
落としてしまった。

きっといつまで経っても仲直りしない私たちに
痺れを切らして翠が実行したんだろう


「んー、誰…?」


龍がうっすら目を開けてしまったのに
私は驚きで足が動かなくて突っ立ったままで


「なんでお前がいんの」

頭いてぇ、と言って額に手を当てる龍


「俺等絶交したんじゃなかったの」


「翠が、学校まで迎えに来ててっ
紫苑だって聞いてたから」


「あぁ、あいつの仕業か」


あの、キスの場面を見て以来
一回も見ていなかった


ぶわっと、忘れていたはずなのに
あの光景が頭に浮かんで


「ごめん、帰るね」


そう言って急いで荷物を手に取った


「美桜」


「っ、」


「なんで泣いてんの」


そう言って龍がゆっくり起き上がる


「まだ、安静にしてなきゃ」


「じゃあこんな病人放って帰ろうとすんなよ」


そう言って龍が私の腕を握った


「やだっ絶交中でしょ、?」


「まだ拗ねてたのお前、」


「拗ねてるんじゃないわよ。
でもこないだ龍カラオケでっ、」


はっ、とした
小窓から覗いたなんて恥ずかしくて言えない


「カラオケで、何?」


「…お腹すいてない?」


「下手くそ。言うまで手、離さないよ」


完全にやらかした。


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