scarlet
再スタート?


龍が風邪をひいた日から、もう早いことに
1ヶ月と半月が過ぎようとしていた。


逃げ癖、良くないなぁ。なんて
思っているけど倉庫には顔を出せてなくて


龍とも連絡は取っていてたまに電話で
他愛もない話をしたりしてるから気まずさは
もうないんだけど、聖夜と顔を合わせづらい


♪♪♪ 〜


「龍?」


「聖夜が、呼んでる」


「そう、今日倉庫に顔出すよ」




聖夜が呼んでるってそのひとことで
会いに行ってしまう私って結局、
なんなんだろう。


確かにあの頃の私はなによりも聖夜が
一番で口だけの生半可な気持ちじゃなくて
ほんとに自分の命よりも大事に思えるぐらい
私の世界の中心は聖夜だった

そんな聖夜に突き放されてからの一年
龍の存在が大きくなりすぎた、

聖夜が大切な気持ちは今でも変わってない、
そのはずなのに龍が消えてくれない。


(会いたいのは、誰なのかしらね)


1ヶ月半ぶりに倉庫の前に立つ。

気持ちはまだ宙を舞って消化できない


「お久しぶりです!美桜さん!!!」


「寂しかったんですよー」


「あれ?また綺麗になりました?」


なんて口々に声を掛けてくれる下っ端のみんな


軽くみんなと話して幹部室に向かう。
心音と足の震えが、更に不安にさせる


何も悪い事はしてない、龍はみんなに
話したりするはずないのに何故か顔を合わせる のが怖くてたまらない。


ガチャ


ゆっくり扉を開けると、みんな揃っていて


「何?この空気は、」


重たく息苦しいこの空気。


「美桜、」


私を低く切ない声で呼んだかと思うと


「そばから離れんな」


そう言って私を抱き締める


聖夜に抱き締められるのは好きなのに
今はその姿を龍にみられたくない。

ほんと、自分が嫌になる

何もかも捨て切れないくせに
中途半端なワガママばかり。


「俺ら、買い出し行ってくるね」


そう言って他のみんなは行ってしまって
部屋には私と聖夜の二人きり
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