scarlet


「どうした、の?」


「昔にお前のこと攫った奴らがいたの
覚えてない?」


「あぁ、毒華?だったかしら、」


まだ聖夜と付き合っていた頃に一度だけ
攫われたことがある。
結果的に私には何の危害を加えられず
毒華と魁星の抗争で終わったんだったっけ。


「また、動き出したらしい。」


「……私は監視生活が始まるってことね」


守ろうとしてくれるのは、嬉しい
だけど自分の身すら自分で守れない
不甲斐ない自分が余計嫌になったりして

好きじゃない


「察しがいいな美桜は、
悪いけどまたしばらく誰かと一緒に行動して」


そう言って困ったように笑う聖夜


「嫌だって言っても聞いてくれないでしょう?
ただし、みんなにもこれだけは伝えておいてね
自分の身を守ることを1番に優先してって」


そう言うと、分かってるよってまた
安心させるように笑うんだけど
いざ、となると誰もこの約束を
守ってくれないから、苦しくなる


「……今回はね、
俺あんまり傍に居てあげられない」


「えっ、?」


「やることが今色々あってその為に
外に出ることも多いから。
信頼してる俺の仲間だから、大事な美桜のこと
あいつらに頼もうと思う」


「そう、わかった」


ごめんね、と私を抱き寄せる

察しがいいってこういう時、ほんとに困る

今聖夜は、他に守らなきゃいけない人がいて

それは多分私よりも、大事な人


みんなが頼りないわけじゃない

だけど聖夜が私を一番に優先してくれないことが

私はどうしようもなく、つまらない


「いいのよ気にしなくて。」


今だって抱き締めていれば私の顔を
見なくて済む、そしたら自分が感じる罪悪感も
少しは紛れるからでしょう?


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