scarlet


どうせ今更急いだって遅刻なんだしゆっくり
用意するか、と重い腰を上げて部屋を出ようとした時ベッドに放り投げたままの携帯が鳴って

「っ、」


掛けてきたのは、この気分をさらに憂鬱に
させる人間で


(毎日、懲りない男)


そのまま電話を無視してシャワーを浴びたり
行く準備をしていたらもうすっかりお昼時。



「行ってきます」


「気をつけてね〜〜」


私が学校に行く頃にはお母さんも出かける準備が終わっていてご機嫌な様子


家を出てすぐに携帯を開くとそこには何件もの
紫苑(しおん)からの着信があってかけ直すと


「なんで出ないんだよ」


と、一言目からイラついている様子の彼


「貴方にどうこう言われる筋合いはないと
思うんだけど何の用なの」


私今日はいつも以上に気分が優れないのに


「聖夜がお前に会いたがってんだよ
俺だってあいつの頼みじゃなかったら
電話なんかかけてねえよ」


何を今更、言ってるんだ
私にはこの一年の間に直接連絡もないまま
間接的に監視して縛ってきたくせに。


会いたいだなんて言われたところで
またあんな辛い思いをするのかと思うと
どうしても会う気にはなれない



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