scarlet


「楓なら、」


「楓なら他にもっとふさわしい子がいるとか
言い出すんじゃねえよな〜?」


意地悪な顔をして私をどこか睨む


「みんなね、私の事買い被ってるのよ
そんないい女じゃないわよ私」


「姫も、回りくどいな〜
はっきり言ってくれていいよ
振られるの分かってたし」


違う、違うの


「俺のことなんか、眼中になかったでしょ」


「違うの。嬉しいの気持ちが
自分の信じた人は最後まで大切にする
兄弟想いの優しい楓から告白されて
純粋に嬉しい。私はそれを断れるほど

優しくないの、ずるいのよ。」


「なに、それ」


「ほら、ね
引いたでしょ。私こういう女なの
ずるいの。だけどこのまま待っててもらっても
応えられるかどうか分からない。
ただ、今すぐに楓を突っぱねられるほど
私今そんなに強くないし冷静じゃない」


誰かに、傍にいてほしい


最後にか弱く出た本音に
自分でも驚いて手が口元を抑える

これ以上余計なこと言わないように


「そんな姫も、嫌いじゃねえよ俺
自分でも引くほど好きなんだよ
俺を選んでくれなくてもいい
けど、何かあったら俺のことも頼れよ

蚊帳の外なんて、寂しいから」


いつもの楓からは想像できないほどの
弱気な発言。それに加え私の肩に
額をつけるような状態の、彼


「……ごめんね」


そう言って彼を離すと、眉尻を下げた楓は


「美桜が何もかも差し引いて
めんどくせえ事情全部取り除けたときに
誰を選ぶかってのはさ、もうお前自身も
分かってんじゃねえの…?」

だからって諦められる気はしねえけど

と、笑う楓


「楓、、」


「姫のこと見てきたから多分みんな分かってる。
俺に流されてしまえば楽かもしんねえけど
姫の気持ちは?また俺の事傷付けたって
悲しむんだろ?なら向き合う他ないんじゃねえの」


「私の事突き放していいのに
嫌いになっていいのになんでみんなそんなに
優しいのっ……」


不甲斐ない自分に、悔しくて涙が止まらない

こんな自分が嫌で仕方ない


「責める必要ねえよ、みんなお前の立場なら
そうしてる。だから嫌いにもなんねえよ

綺麗事って思うかもしんねえし
カッコつけたいだけかもしんねえけど

美桜はいつでも笑っててほしいって
それが一番の願いなんだよ俺の」


だからもう泣きやんで、な?

と涙を拭ってくれる楓。
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