scarlet
「もう、会わないわよ」
「聖夜が言ってんだぞ、無視すんのかよ」
「そもそもあの人が二度と会わないって私に
言ってきたくせに今更、」
「お前がいないとあいつはだめなんだよ」
それぐらい分かってやれ、と彼は言うけど
「ならどうして聖夜は一年前、私を捨てたの」
「それは、」
言葉を詰まらせる紫苑。
私にだって彼しかいなかった。
彼がいないとダメだったのに。
そんな私を突き放したのは、聖夜で。
「大好きだったのよ、彼のこと。
愛してたから簡単に許せない」
あっさり私を手放した彼を許せないのは
私のつまらないプライド。
「……俺は伝えたからな
聖夜から連絡来たらせめて返してやれよ」
じゃあな、と言ってすぐ終わった電話
紫苑は聖夜と同じ魁星という暴走族に
入っていて聖夜が総長で紫苑は幹部の1人。
聖夜以外は今でもよく連絡してきてくれるけど
肝心の聖夜は一年間一回も連絡してきたことはない
別に彼等に何かをされたわけじゃないし
私が嫌う理由もないんだけれど。
彼等のことも好きだったからこそ、
受けた傷は大きくて。
嫌いだ、なんて言葉で自分を守ってる。