scarlet

電話をかけた相手はもちろん翠で


「もしもし?終わったの?
まさか今メッセージ見たとか?」


「そのまさか、よ。
翠はもう少し物わかりがいいと思っていたけど」

違ったのかしら、と。

挑発的な言い方しかできないほど余裕はなくて
まだ教室だから表には出してないものの
突然のことに頭がついてかない


「かなり、動揺してるね。聖夜が自分から言い出したんだよ。俺は総長の言うことに従っただけ」


ふふっ、と笑って状況を楽しんでる翠


「紫苑にも伝えたけど私はあの人に会うつもりは
ないの。こんなことされても迷惑なだけよ」


「自分から美桜に会いに行くぐらい追い込まれてるってことだよ。
仮にも関東でかなりの勢力を持つ組織のトップに立つ男だよ聖夜は。」


「そんなこと私に、関係ない」


「美桜こそもう少し物分りのいい女だと思ってたよ俺は。分かってるんでしょ聖夜が堕ちてること

俺達は聖夜について行くしその為なら精一杯のことはするよ。だけど支えることはできても美桜の代わりにはなれない。」



聖夜のことを追い込んでいるものが何なのか
全くわからない。
この翠の言葉にわまんまと騙されたわけじゃない


ただこの日は雨で、朝からついてなくて。
その原因が全部聖夜にあったとしても
今日の私はどこかおかしいから


「……分かったわよ。会うだけ、ね」


その翠の挑発とも取れる誘いにまんまと
乗ってしまった


「さすが美桜だね。ありがとう。」


短く返事して電話を切って少し早歩きで向かう
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