scarlet


「……お前に、溺れていくのが怖かった

こんな理由ひとつでお前を手放して傷つけた
わけじゃねえし今更弁解するつもりもない

けど離れてた間の一年間お前を忘れたことは
誓って一度もねえ。」



「……そう、」
  

「…………傷付けて、ごめんな」


私にちゃんと向き合って目を見て
真剣に言ってくれる聖夜を疑うわけじゃない


ただ、


「どうしていいのか、わからないの
問題も解決してないんでしょう?
また私を聖夜は手放すかもしれない

またここで信じて裏切られたらそれこそ
もう私は立ち直れないと思うの」


本当はこの一年間何回も願ってた
彼が私に会いに来てくれることを。
そしたら思いっきり怒ったあとに
思う存分抱きしめてもらおう思ってた

だけどいざ、目の前にすると
思った以上に冷静でこの状況を客観的に
見てる自分がいて、何も考えずに
飛び込むことはできなくて。


「無責任なこと言ってるのは分かってる
お前が信じられないのも当然だ

けど俺は諦められねえ、お前を忘れるなんて
できないんだよ。お前がいないと俺は
もう、何も無いんだよ。」


弱々しくそう言って私の肩に
顔をうずくめる彼


「ごめん、ね」

彼がこんなにも弱かったなんて
知らなかったから。
私が描く理想像を無理矢理押し付けてたのかも
知れないな、なんて思ったら胸が苦しくて


「美桜が、謝ることねえよ」


私は抱き締めてあげることができなかった
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