花はいつなんどきも美しく
とても重要とは思えなかったし、どう反応すればいいのかわからなくて、私はそれを無視した。


そして私との約束を取り付けた園田雪は、時間も場所も決めずに自分の席に戻ってしまった。


「そういえば聡美、雪君と知り合いだったの?」
「ちょっとね」


資料の直しをしながら愛子と会話を続ける。
やっぱり詳しく言えなくて、適当に誤魔化す。


「あんなに可愛い子と知り合いだったなら、早く教えてよ」
「ちょっと見かけたことがあったくらいで、ちゃんと会話したのは今日が初めてだから」


半分投げやりになりながら答える。


くだらない会話をしながらも、正しいデータを確認し、それ以外に間違いがないか見直す。
するとそれを邪魔するかのように、愛子が私の肩に肘を置いた。


「仕事中なんですけど」
「まだ休憩時間ですー。仕事脳すぎなのよ、聡美は」


手が止まった。


だから恋人を奪われたんだ。


愛子はなにも知らないのに、そんなふうに言われているような気がした。


「あ、あれ?どうした?」


私が固まってしまったことで、愛子は動揺したらしい。


「……なんでもない。ほら、そろそろ時間だよ」


無理やり、愛子を椅子から立たせる。
納得いかないような表情をしていたけれど、気付かないふりをするしかなかった。
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