花はいつなんどきも美しく



仕事が終わって会社を出ると、園田雪が石段に腰かけ、カバンを両手で抱えて夜空を見上げていた。


両手で抱える必要あるのかとか、見上げてる横顔がアホ顔だとか、口を少し開けてるのが妙な色気みたいなものを出してるとか……


とにかくいろいろなことが頭に浮かんだけど、とりあえず。


「……何してるんです」


どうして待っているのかはわかるけど、この言葉以外出てこない。


園田雪は立ち上がると、照れ笑いを見せた。


「話したいことがあるって言っておきながら、時間も場所も決めてなくて……かといって、また仕事の邪魔をすることもできず、岩本さんの仕事が終わるのを待ってました」


……お前は私の彼女か。


「岩本さんは、とても仕事が好きなんですね」
「そのせいであなたに彼氏を取られましたけどね」


棘のある言い方をしながら、園田雪の前を通る。


「そ、それは違います!」


初めて聞いたしっかりとした声に、思わず足が止まった。
振り向くと、まっすぐと私を見てくる園田雪がいた。


「僕とフミ君は、中学の同級生です。僕は……そのときからずっと、彼のことが好きでした」


頬を赤らめる園田雪を見ていたら、私が告白されているように錯覚してしまう。
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