花はいつなんどきも美しく
「だから、その……岩本さんからフミ君を奪ったっていうか……取り返した……」
「私がドロボーみたいなふうに言うのやめてくれませんかね!?」


食い気味に言い返すと、園田雪はぽかんとし、次は笑った。


「ごめんなさい」


笑いながら謝られると、何とも言えない複雑な気持ちになる。
怒る気力もなくなる。


「……ずっとあの野郎が好きだったのに、どうして早く言わなかったんですか?」


ふと気になったことを聞いただけだが、その質問で園田雪から笑顔が消えた。


「男から好きって言われても、困るでしょう?」


泣きそうな笑顔に、こっちまで胸が締め付けられる。


「……て、そんなふうに思っていながら、どうしてあんなことになったんです」


いくら私が嫌だったからといって、男と付き合うような人間ではなかったように思う。
つまり、園田雪が言わない限りああいった状況にはならないはずだ。


「それは……同窓会で再会したとき、フミ君が『雪が女だったらよかったのに』って言ってくれて。その帰り道、思い切って告白してみたら……」


上手くいきましたって、申し訳なさそうな笑顔に書いてある。


腹が立つ。


「……話ってそれだけですか」
「あ、いや!フミ君が、岩本さんの物をどうしようかって」
< 12 / 79 >

この作品をシェア

pagetop