花はいつなんどきも美しく
びっくりするくらい、どうでもいい話だった。
こんなことに時間を使おうとしたなんて、バカみたいだ。


「聞いてこいって言われたんですか。大変ですね」


投げやりな言い方は、上司に対する態度ではない。
だが、わかっていてもやめられない。


園田雪は胸元で小さく手を振って、私の言葉を否定する。


「いえ、違います。偶然、岩本さんと同じ部署になったので、チャンスかと」


園田雪は私の顔を覚えていたらしい。
まあ、ドロボー女の顔は忘れたくても忘れられないか。


……自分で言っていて切なくなる。


「あの……もし必要な物だったら、僕持ってきますよ?」
「捨ててもらって大丈夫ですよ。大したものじゃないので」


それだけを言い捨てて、その場から離れた。


なんというか、調子が狂う。
もっと悪者っぽくいてくれたら、恨んでやったのに。


それすらもできない。


湧き出ていたこの怒り、どうしてくれようか。


「あ!男に男を取られた女だ!なになに?今日もやけ酒?」


無意識にママの店に足を運んでいた。
ついでに、ドアを開けてその言葉が耳に入るまで、ぼーっとしていた。


「愛子……!?」


完全に酔っ払った愛子が肩を組んできた。


「どう?男に負けた気分は?」


愛子は私にエアマイクを向けてくる。


待て待て。
私、愛子には何も言ってない……


店内を見渡すと、カウンター席でわざとらしく私たちから目を逸らす真司がいた。


「真司、言った……?」
「愛子に逆らう勇気なんかねーよ」
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