花はいつなんどきも美しく
……それは、私にもない。


「ほらほら、答えてごらん?女として魅力がないさ、と、み、ちゃん」


語尾のハートが気持ち悪い。


と、はっきり言えない私。


「それくらいにしてあげなさい、愛ちゃん。聡美ちゃんだって、ちゃんとわかってるんだから」


困り果てていたら、ママが愛子から解放してくれた。
愛子は口を尖らせながら、真司の隣に座った。


「まったく……愛ちゃんの酒癖は相変わらずねえ」


ママは呆れた表情をして笑っているだろう。


私は、隣に立つママの顔が見れない。


「ママ……あ……りがと……」
「いーえ。今日もいつものでいいかしら?」


頷き、カウンター席の端に座る。


鼻歌を歌いながら、私が頼んだものを用意してくれているママが、かっこよく見える。


たった一言。
記憶がなくても、そういうことをしたと思うだけで、相手にドキドキしてしまうものなのか。


……いや、そうじゃなくて。
私はそれだけで意識するようなやつじゃなかったはず。


「なにか悩み事?」


ビールと唐揚げが私の前に出される。


たしかに悩んでいるが、ママに言えるはずない。


「……大丈夫」


小声で誤魔化し、ビールを喉に通す。
いつもなら美味しいと思うのに、今日はよく味が分からない。


「聡美、変」


いつの間に隣に来た、酔っ払い。
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