花はいつなんどきも美しく
そして唐突に悪口を言うのはやめてくれないか。


「そんなにショックだったの?」


私が反応しなかったのを、男を奪われてショックだと捉えたらしい。


「……なんでショックじゃないって思うの」


実際そんなことはもうどうでもよかったが、話を合わせてみようと思った。


「だってほら、聡美、彼氏に本気じゃなかったじゃん」


冗談で言っているようには見えなかった。


だけど、それは違う。
私だって、ちゃんと好きだった。


「相手とずっと一緒にいたいって、思ってなかったでしょ。一緒にいるのが当たり前で、このままゴールインだって」


図星だ。
何も言い返せなくて、唐揚げを口に含んで誤魔化す。


「いるのが当たり前だって思う関係が悪いとは言わないけど、聡美は違うでしょ。いなくても困らない」


……どうしてここまで人の心の傷を抉るかな。
もうちょっとオブラートに言ってほしい。


「愛ちゃんはまた聡美ちゃんに厳しいこと言って!」
「だってママ。言われなきゃわからないことだってあるでしょ」


……もう、言われなくてもわかってるよ。


「愛ちゃんはそう言うけど……どうしても、聡美ちゃんだけが悪いとは思わないのよね。聡美ちゃんを本気に出来なかったその男も悪いわ」


涙がこぼれた。
不思議と胸に染みた。


「だから、元気だしてね、聡美ちゃん」
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