花はいつなんどきも美しく
思い出すだけでもイライラしてきて、手元のビールを飲もうとしたが、さっき飲み干していたせいで、ジョッキは空だった。


「……おかわり!」
「ダメよ。聡美ちゃん、飲みすぎだもの」
「飲んでないとやってられないの!」


ママはため息をつきながら、席を立つ。


ビールを待っていたら、周りの声が聞こえてきた。


同情だろうか。
それとも私を嘲笑っているのだろうか。


どちらにせよ、居心地が悪い。


「あーあ……結婚するって、思ってたんだけどなあ……」


うつ伏せになりながら、独り言をこぼす。


「男より仕事優先したんじゃねーの?デートドタキャンとか」


まるで見てきたかのように、真司が私の独り言に反応した。
手元にあったお手拭きを真司に投げつける。


「……うっさい」


拗ねるように、額を机にぶつけた。


横から真司が鼻で笑ったのが聞こえる。
そのまま顔をずらして真司を睨むと、真司は完全に私をバカにした目で見ていた。


「聡美は、基本的に女子力捨ててるからな」
「あら。仕事に勤しむ女性はかっこいいのよ?」


ママはビールを置くついでに、私の頭を数回、優しく叩いた。
私はゆっくり体を起こす。


出されたビールを少し喉に通す。


「俺は、付き合った彼女が仕事命だったら嫌だね」


その言葉は、思った以上に私の心に刺さった。


さっきまでは憎しみでいっぱいだったはずなのに、私が悪かったと言われ、どうすればいいのかわからなくなった。


また涙が溢れ出す。


するとそっとママが抱きしめてくれて、その温かさに甘えるように私は意識を手放してしまった。
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