花はいつなんどきも美しく
「……は?」


それは自然と零れた。
すると、真司はまた鼻で笑った。


「冗談だ」


真顔で冗談を言うのはやめてくれないかな。
いくら付き合いが長くても、普通に騙されるから。


私はその冗談に惑わされたことが悔しくて、仕返しに真司の焼き鳥に手を伸ばす。


だけど、それは園田雪に邪魔をされた。
園田雪は私と真司の間に座る。


必死かよ。


「僕、園田雪っていいます。お名前聞いてもいいですか?」
「……永木真司」


真司は園田雪に迫られ、少し後ろに逃げながら答えた。
その様子がなんだかおかしくて、笑ってしまう。


「いつもの聡美ちゃんなら、声を出して爆笑するのに。やっぱり、元気ない?」


おしぼりと水を置きながら、悠之介が言う。


よく見ているというか、なんでもお見通しなんだな。


「……ちょっとね」


言えないわけじゃなかったけど、なんとなく、悠之介に知られたくないと思った。


「そう。あまり抱え込まないのよ?」


それも悟ってくれたのか、悠之介は詳しく聞かずに、料理を始めた。


隣で真司に必死にアピールしている園田雪の立ち直るスピードが、単純に羨ましい。


私は奴と別れてから何度も、私が悪いのだと言われてきて。
トドメは奴の本音で。


心は、それはもうバッキバキに折れているわけで。


思わずため息だって出てしまう。
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