花はいつなんどきも美しく
「つき、あう……私たち、が……?」


その反応は、嫌だと言っているようなものだった。


「ごめん、急ぎすぎたね」


私の不安が伝わったのか、悠之介は苦笑いした。


「そうだな……デートはどう?一緒に出かけるだけ」


ね?と優しく微笑む。


それもまた、ドタキャンして悠之介を傷付けるのではないかと思ったが、もうすでに悠之介に気を使わせてしまっている。


デートくらい、私にだって。


「……わかった」


自分でも、無感情な声だと思った。


「いや、あの……嫌なら断ってくれてもいいんだよ?」


だから、悠之介がこう言うのも無理ない。


さっきから、本心を隠して悠之介を悲しませてばかりだ。
私は、悠之介のこんな顔が見たかったわけじゃない。


「違う……嫌じゃなくて……怖いんだと、思う」


自分のことなのに曖昧だと思われるかもしれない。
だけど、怖いという言葉は違うような気がして、そう言うしかなかった。


すると悠之介は吹き出すようにして笑いだした。


今のどこに笑うところがあったのかわからなくて、私は首を傾げた。


「本当、聡美ちゃんって可愛い」


そう思ってくれるのは、悠之介だけだと思う。


「少しずつ慣れていけばいいよ。全く気にしないでいるのは難しいかもしれないけど、ドタキャンしたからって嫌いになったりしないから。俺は、仕事を頑張ってるかっこいい聡美ちゃんが好きなんだし」
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