冒険者の王子は 旅と恋する


***


***


「・・・・ですから、
 僕は、あなたの護衛騎士を離れ
 精霊が企てていた誘拐の計画を・・・
 同僚の騎士ビラットに発見させ
 ----罪人になったのです。」


フィロスは、
じっと俺を見つめて・・・悲しげに告げた。



・・・

ほんっと、ほんとに 申し訳ないんだけど、
後ろで涙を流し始めた ダイナラスさんにも
(めずらしく)真剣に話を聞いている
ウルーチェ先生にも申し訳ないんだけど・・






なっがいわ!!!

具体的にいうと三ページ前から

半分聞いてなかった!とかいったら、
俺、空気読めない?


えぇと、
要約すると、

 騎士フィロスは体が弱かった。
 それを助けたのが、リンキー・ティ教団の謎巫女。

 フィロスは助けられたけど
 謎の巫女は、主人である第二王子をどうにかしようとしていた。

 意図せず
 手を貸していたらしい騎士フィロスは、
 自分自身を戒めるために
 捕まって、監獄へ←今ココ!

みたいな感じ?


あーー、確かに、味方かって聞いたけどさ。
別にそういう意味じゃねぇよ?

街に出るための共犯がほしかっただけよ?
そんな、すっげーこと聞いたわけじゃねぇよ?

手を伸ばした・・・?
そんなん覚えていないし。
そんな意味ありげに言われてもさ。深読みしすぎじゃね?



「・・・・ばかなの?」

っと やべ、口に出しちゃった。



俺、フランチェスコはいわゆる『死の記憶』がある。
遠い昔・・・ただの平凡な男として育ち、成長し学び、働いていた記憶。

それを思い出した時、
俺の『意識』ははっきりと『生きている』のを認識した。

俺はよくわからんが、そのころから
魔力も精神も落ち着いたらしいから、
ただただ、健康な体に感謝して
やりたいことを、やろう。生きているうちに。と思った。

だから、
我がままだと、いろんな人に迷惑をかける。
と思っても、
王宮を逃げ出し「王子」という立場を捨てた。


それなりの覚悟もしていたし
それなりに「にげる」ことに対して罪悪感もあるが
それよりも、『生きる』ことに全力になろう。

そう思ってる。のに、こいつは!!!



「------あーーーー
 俺の価値観を押し付けたらだめだけどさ。
 ・・・・騎士である、貴族、しかも『三柱』の出身のお前の
 崇高な価値観は、解らんが・・・・・


 ーーーバカなの?」


あ、ごめん。
マジ冷たい声が出た。


ウルーチェ先生が、びっくりしたように
俺を見た。
珍しいっすね。ウルーチェ先生のそんな顔。



「・・・・てかさ。ウルーチェ先生。
 なんで、今、このタイミングで
 「フランチェスコ王子」と「罪人フィロス」を面会させるの?
 チャンスはいくらでもあったでしょう?」

はぁ、とわざとらしくため息をつきながら
ウルーチェ先生を見る。


ウルーチェ先生は、ちょっと迷ったように、
騎士フィロスを見る。

騎士フィロスは、ウルーチェ先生の視線を受けて、
意を決したように、
俺を見て、軽く目を伏せた。

「-----。
 余命がもう、ありませんので・・・その前に
 ということでしょう。」

「は?」


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