冒険者の王子は 旅と恋する

「三柱であるカシン家は
 多大な「火の魔力」を体に宿す代わりに 
 『命石』を持って生まれます。
 魔力の安定と、体の安定の為にあるとされています。
 その石が・・・割れて、魔力が安定しませんので
 僕は、持って一か月でしょう。」


マジっすか。

「あの日、
 あの女から与えられた精霊が出ていき
 命石に亀裂が入ったときから
 ---力が無くなっていくのがわかります。」

静かに騎士フィロスはつぶやいてから
首に下げいている袋から
赤いきらりとした宝石を出す。
彼の命石だろう。

あー、普通にきれいな宝石っぽい。
確かに ひびが入ってる。

後ろで控えているダイナラスさんが
ちょっと身を乗り出した。

「・・・っ。じゃぁ、
 生きるために・・・お前はここに入ったのか・・・。」

ダイナラスさんが唸る。
え?
なんで?

あぁ、首や手についている輪っかみたいなのは魔力を安定させるのか。拘束具であるがその影響で命石も安定していると・・・。

へぇ。原理はわからんな!


っていうかさ・・・・


「---お前は・・・自分の為に逃げたんだろ?」

なんかさ、
余命に気を取られて、思わず、納得しそうになったけどさ。

「なぜ、すべてを知ったときに
 カシン家を頼らない?
 優秀であった同僚に相談しない?
 王宮にはこのダイナラスだって 居たのであろう?」

思わず、威圧してしまう。
俺の魔力が言葉に乗ってしまう。

「・・・すべての罪をかぶって?
 すべての企みを暴くために
 リンキー・ティ教団に注意せよと 意識づけるために
 捕まったと?
 ----バカなのか?
 なぜ、自分で動かぬ?
 なぜ、その役目を同僚である騎士ビラットにさせた?」

だんだん、腹が立ってきた。
第二王子であった俺の護衛騎士であった騎士ビラットは真面目過ぎるが
それゆえに、同僚である 騎士フィロスの行いに苦しんだだろう。

「お前は、弱い。
 それが故に 信頼していた同僚である騎士ビラットに
 同僚を罪人として捕まえる。という つらい経験をさせたんだ。
 わかるか?
 お前の罪は・・・俺を誘拐しようとして
 たくらんだことなんかじゃないんだよ。」

静かに 告げる。

騎士フィロスが、ぐっと 言葉に詰まり、
泣きそうに顔をゆがめる。

「・・・・お前がやったことは、

 善意でも詫びでも、なんでもねぇよ。
 たんなる、『逃げ』だ。」

マジで。

っていうか、俺も『第二王子なんて面倒』なんて
王宮から逃げてるからエラそうに言えないんだけどさ。

今は棚に上げておこう。

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