冒険者の王子は 旅と恋する
契約をすると
獣魔を使役するように「俺の魔力」をエサに
動けるようになるらしい。
騎士フィロスが。
えーーー??
延命措置というには
ちょっと、アレじゃん?
思いっきり顔をしかめちゃいましたよ。
人としての尊厳は??
「それって、どうなの?
っていうか、そういう契約は「黒」のほうが出来ると聞いたんだけど。
アレク兄さんのほうがよくない?」
アレッサンド第一王子のことね。アレク兄さん。
「それがじゃの、
『第二王子が双子石の騎士を伴う』らしいのじゃ、それに」
「ちょちょ、ちょっとまって!
それ、聞いても良い奴?
変なのに巻き込まれる気はないよ!ウルーチェ先生!!」
焦る。
「私は王子が許していただけるのならーーー
どちらでも受け入れようと考えております。
今ここで、命を果てよというのであればそのように。」
どうぞ、と言わんばかりに、
フィロスが赤い命石を机におく。
確かに、手のひらに収まるほどの宝石に
横にしずくのようにもう一つ石がくっついているように見える
バランスの悪いハート形だな。
あれ?
あぁ、そうだ。
ふと思い出した。
騎士フィロスに「味方か?」
と聞いたとき 確かに手を伸ばしたと思う。
フィロスの石から、紫っぽいもやもやと
キラキラとした
火花のようなものが出ていたから
なんだこれ、と思ったんだ。
いまなら解る。紫のこの淡い霞は操るための術式の残りだろう。
何年もたっているのに残り香のように
染みついているのは相当強い「魔術」を施されたんだろうな。
思わず、淡い靄をつかむ・・・・
「あ、つかめた。
つかめるのか・・・」
ぐいーーーっと引っ張ってみる。
おおおぉぉぉ。伸びる。
きゅぽん。と、一メートルくらい伸びてとれる。
くるくるーっと糸を巻くようにそいつを巻き取る。
思わず取っちゃったけど、
これなに?
「・・・術の『残骸』か。
さすがじゃな。こんな細いのがまだからまっておったのか。」
ウルーチェ先生がつぶやく。
残骸?
「・・・チェース。あの、いえ、フランチェスコ様。
彼のかかっていた術は心の奥に刺さっていたようで
その跡でしょう。
そういったものは、残しておけば心に害がありますが
なかなか、『視え』ませんので
さすが浄化を得意とする光の王子でございます。」
うしろから、
ジョイルが丁寧に説明してくれる。
えー、てかさぁ、すげぇ他人行儀っすね。
「おいおい・・・ジョイル。
今更丁寧に王子様あつかいされても、俺、ヤダよ。
普通にしろよ」
とりあえず、この糸はウルーチェ先生に任せた。
どうにかしてくれるだろ。
くるくると糸を巻いてぽわんと、光の結界で箱状に包む。
ぽい、とウルーチェ先生に渡す。
ちらり、と、もう一度騎士フィロスをみて、
彼の『命石』をみる。
うっすらと端のほうからヒビが走っている。
確かに もうすぐ割れる。と言われても納得だ。
「はぁ。」