冒険者の王子は 旅と恋する

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「フランチェスコ様。足元が悪うございます。
 お手をどうぞ。」

「あのなーー騎士フィロス。俺はもう「冒険者チェース」として
 行くって言ってるだろ?!
 しかも、手をってそんな子供じゃねぇって!」


俺の怒鳴り声に、
ジョイルが「まぁ、まぁ」と言いながら、困ったように仲裁に入る。


**


あれから、

まーー、
術は大成功だな。




一瞬、戸惑いを見せた
騎士ダイナラスが、見たこともない魔法陣(俺 オリジナル)に警戒しつつも術を発動。

ほんと、細くて細かい、○○の時、○○であるが▽▽の時は◎にするべし。
っていう魔法陣に書き込むのは面倒な文も丁寧になぞって
術を発動したのには、俺もびっくり。魔力の操作技術半端ねぇな。

ちなみに、枯渇している魔力を
巡回させて、増幅する。そんな術だ。
ジョイルが、それと俺をつなぐように
俺の魔力を途切れるまで、供給されるような「呪い」


俺は魔力を注ぎ込むだけ。

まぁ、強制力はないが
強制的に俺が魔力を注いで それをフィロスが受け取っている。って感じかな。
俺の役目は「電池」ってとこかな。


あ、俺?
俺は、そういう細かい作業はできないから
今回はただただ、魔力を供給してただけ。(楽ちん)

すうぅーーーっと
魔法陣がフィロスの命石である赤い宝石に吸い込まれた。

瞬間、ウルーチェ先生が叫ぶ。

「大儀である。騎士ダイナラス!!
 騎士フィロス。現在現時をもち、第二王子あらため
 冒険者チェースに仕えよ!!
 『賢者ウルーチェの名において』
 この 瞬間より 光の牢獄からの 退所を命じる!!」

ウルーチェ先生が叫ぶとともに、
ぶわぁっと風が巻き起こる。

「げえ!!ちょっと、せんせ・・・」

「達者でな?
 あとは、任せておけ」

にやり、と楽しそうに笑った。



次の瞬間、
あっという間に、体は風と小石に包まれて、
元居た、森の中に立っていた。

「え・・・?
 えぇ!!!??どいううこと?!」

思わず叫んだ俺の隣には
ボー然としている
ジョイル。

そして・・・少しやつれているものの、
しっかりした足取りの騎士フィロスであった。


そして、冒頭に戻るってやつ。





「と、とりあえず、
 荷物は・・・」

「・・・あ、飛ばされてますよ。チェース、拾います。」

その辺に一緒に落ちてきた荷物を拾う。
ちょっと斜面に落ちてしまった
荷物たちをひょいっと
集める。足場がわるい?一応これでも鍛えているって。

「ほら、騎士フィロス。
 それじゃ、ひらひらして動きにくいだろ?」

荷物の中から着替えを引き出す。
騎士フィロスは頭からすっぽりかぶるタイプの布をつけているだけだ。
こんな山じゃ動きにくくてしょうがない。
フィロスは深々と頭を下げて受け取る。

あー、やっぱり俺にとっては長ズボンだが
お前には短いよな。
ま、ないよりましか。シャツもつんつるてん。

「フランチェスコ様。私の騎士の身分ははく奪されております。
 どうか、そのままフィロスと。」

「ん?あー、わかった。
 じゃ、俺のことも「冒険者チェース」って呼べよ?」

と、にっこり笑ったところで
首のあたりが ちりちり と静電気みたいに何かが走った。



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