冒険者の王子は 旅と恋する

まぁ、俺が元気に王宮を抜け出せたのも、騎士の追跡をかわしているのも賢者ウルーチェ先生と、魔術のスペシャリストの賢者バームス先生のおかげなんだけどね。

抜け出して冒険者になったそのおかげで、
道中ジョイルと出会って、一緒に旅することになったんだけどさ。


「…お久しぶりでございます。」
「堅苦しいのぉ。ジョイル。
 通信魔道具はしっかり、聞こえるようじゃなぁ。」

「はい。当初、急に声が聞こえたときは焦りましたが・・・
 指示通りに結界と、罠を仕掛け
 身をひそめていました。」
「よいよい。いい結界じゃな。」


「あぁ、ウルーチェ先生。
 使えるけどさーー・・・こっちからの声は通じないってなんなの?!
 もー、町に出てもいいのかとかもわかんねぇし、
 俺らが出て行って追いかけてきてた護衛騎士はどうなったとか
 そもそも、荷物とかさぁ!!」

ウルーチェ先生が持たせた通信機は一方通行。
形は、耳にかけるイヤホンみたいなやつなんだけど、
こちらからは全然何もできない。
つまり、向こうからの業務連絡しか聞こえない。
しかも、急にだ。

だから、要領も得ず
とりあえず指示通りに、見つかりにくい森の中にキャンプしてた訳だけど。
5日ほどだったが

荷物も持たず、
マジで身一つで俺たちは旅に出たから
もうそろそろ限界だった。
川も近いから
魚とか、木の実とか食べてたけどさー

いい加減パン食べたいし
コメも食べたい。

「なにいっとるんじゃ、
 ちゃんと魔力を込めれば 私につながるようになっとるぞ?」

きょとん、と ウルーチェ先生は
ジョイルの持っていた通信機に魔力を込めるように触れる。

ふぉん。と少し光る。

「ほんとだ…って!!ウルーチェ先生!!
 先生ぐらいの「火の魔力」を注がなきゃ無理じゃないっすか!!
 マジ、欠陥品じゃん、コレ。
 ウルーチェ先生専用じゃん。」

おいおい。
普通の人はそこまで通信ごときに魔力をつぎ込んでいたら
倒れちゃうし、乗り物酔いぐらいの
めまいと気持ち悪さが来そうだ。

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