冒険者の王子は 旅と恋する

沈黙を破ったのは、ダイナラスさんの
静かな声だった。
「久しぶりだな。
 ・・・フィロス。」


あぁ!やっぱり、そうだ。
騎士フィロス。

え?なんで?なんでこいつここにいるの??

てか、ダイナラスさんと知り合い?
え?


「チェース。
 騎士フィロスと、騎士ダイナラスは
 一応親族だ。従弟同士なんじゃよ。」

にてないだろ?
といった感じでウルーチェ先生がふふ、と笑う。

マジで!?似てない!!
マジかーー。

騎士フィロスは、
ピンク色の柔らかそうな髪を右側で結んで、
にこやかに上品に笑う
いわゆる王子様タイプの優男だった。

同じ第二王子付きの騎士の中でもモテモテだった。

淡いピンク色が嫌味の無いぐらい違和感のない男だ。

今はその髪は赤くグラデーションで、
優しげな目元はすっかり呆けたように
何も移していない。

・・・何が
有ったんだろう。







「・・・・・・・・・。
 何 が ・・・目的だ?」

フィロスの少しかすれた声が響く。
表情は何を考えているかわからない無表情だ。


「目的は、おまえがすべてを話して
 罪を軽くすることだが・・・
 今日もお前は喋らないだろ?
 今日は、別に オレじゃねぇよ?
 ウルーチェ様が面会を求めたんだ。」

ちらり、と目線だけウルーチェ先生に向ける。

先生は楽しそうに微笑んで
俺を指差す。

「ふふふ。騎士フィロス=カシン。
 もう、よいじゃろ?
 もう、お前の罪悪感で苦しむのは・・・
 それに巻き込まれた親族はもう『許して』いるぞ。」

「・・・・・-----賢者ウルーチェ様。
 私は 罪を・・・犯しましたので。
 親族には心から謝罪とーーー」
「だから!そんな言葉聞きたいんじゃねぇよ!!」

「ダイナラスにも、迷惑をーーー」
「迷惑っていうなら、さっさと、減刑を受けろ。
 お前は、模範生で後輩の育成のための活動や様々な福祉活動もやって
 監視は付きまとうが、もう出れるだろう?!
 お前の両親も、理解している!!
 だからーーー」

ダイナラスさんがぐいっと
前に出そうになるが、
ぱり、と小さな音がして
結界が透ける。

あ、面会 だから 触れ無い様になっているのか。


「・・・・・・もう、
 疲れたのです。
 ―---家も、私の兄が優秀ですので、
 絶縁した私に構わなくても。家もどうにか持ち直したでしょう?」

「あぁ。お前が
 事前に、家との断絶を準備していたおかげで
 被害は少ないな。
 オレは、お前のせいで王宮騎士から、地方に飛ばされたがな。」

「それは、申し訳なく思っている。
 奥様にもーーー」
「だから!!そういうことじゃねぇよ!!!
 オレは、お前の罪を軽くしたいし、
 早く出してやりてぇ!・・・・・前みたいに
 一緒に、飲みたいと・・・思うのは、オレの身勝手か!?」

ダイナラスさんの怒鳴り声に熱が帯びる。

シリアスなシーンに
マジごめん。

・・・・フィロスって、罪人なの??

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