さよなら、片想い
11.邪魔者は退散
私なりに気を遣った。
『忙しいからしばらく会えなくなりそう』
岸さんからそう言われ、三週間くらい、こちらからの連絡を控えていた。スマホの過去のメッセージ画面を読み返しては閉じる日々。
新しい職場だから、人にしろやりかたにしろ、憶えることがたくさんあるのだと思った。
そろそろ連絡してもいいかなあと十回くらい迷ったのちにメッセージを送ってみたら、すぐに電話がかかってきた。
『週末、って金曜?』
「金曜でも土曜でもどっちでもいいけど。ちょこっとでも会えないですか?」
『金曜は納涼会があるんだ』
「納涼会、早っ! まだ七月になったばかりなのに」
『毎年ビアガーデンを使うって決まっているんだって。年間予定に組み込まれているんだ。他にもパターゴルフ大会だの紅葉狩りだのあるって』
社内イベントの概要を聞き、岸さんはもう違う会社の人になってしまったんだな、としみじみ思う。
「じゃあ土曜日。土曜日の適当な時間に遊びに行っても……?」
『都合悪いんだ。日曜も』
「そっか。忙しいって言ってたもんね」
わかったような返事をしておいた。どうにもならないもやもやが募った。
一目会えたら、食事だけでも、お茶するだけでも、五分でもいいからと、週の真ん中に岸さんのマンションを訪ねてみると留守だった。忙しくなると聞かされている以上、今どこにいるのかと聞くのも躊躇われた。
たぶん、仕事。勝手に待つしかないと思った。
帰りのバスの時間を気にしながらドアの前でしばらくいた。
結局、岸さんとは会えなかった。
『忙しいからしばらく会えなくなりそう』
岸さんからそう言われ、三週間くらい、こちらからの連絡を控えていた。スマホの過去のメッセージ画面を読み返しては閉じる日々。
新しい職場だから、人にしろやりかたにしろ、憶えることがたくさんあるのだと思った。
そろそろ連絡してもいいかなあと十回くらい迷ったのちにメッセージを送ってみたら、すぐに電話がかかってきた。
『週末、って金曜?』
「金曜でも土曜でもどっちでもいいけど。ちょこっとでも会えないですか?」
『金曜は納涼会があるんだ』
「納涼会、早っ! まだ七月になったばかりなのに」
『毎年ビアガーデンを使うって決まっているんだって。年間予定に組み込まれているんだ。他にもパターゴルフ大会だの紅葉狩りだのあるって』
社内イベントの概要を聞き、岸さんはもう違う会社の人になってしまったんだな、としみじみ思う。
「じゃあ土曜日。土曜日の適当な時間に遊びに行っても……?」
『都合悪いんだ。日曜も』
「そっか。忙しいって言ってたもんね」
わかったような返事をしておいた。どうにもならないもやもやが募った。
一目会えたら、食事だけでも、お茶するだけでも、五分でもいいからと、週の真ん中に岸さんのマンションを訪ねてみると留守だった。忙しくなると聞かされている以上、今どこにいるのかと聞くのも躊躇われた。
たぶん、仕事。勝手に待つしかないと思った。
帰りのバスの時間を気にしながらドアの前でしばらくいた。
結局、岸さんとは会えなかった。