さよなら、片想い
「え? 岸さんなの、相手って。結衣ちゃん、岸さんとつきあってる?」

「つきあってる」

 か、か、か、っと顔が火照る。

 共通の知り合いが恋人だと知られることで、こんなに落ち着かない気持ちになるとは思わなかった。穂佳ちゃんがなまじ岸さんを知っているだけに、私と岸さんとは年の差があるだけに、穂佳ちゃんにどう思われるか痛いくらいに緊張が走る。

 こんな辺鄙なところまでついてきてもらった負い目もあり、追及には答えるしかなかった。いつからとか、どっちからとか、なれそめとか。いろいろ聞かれた。それを知った穂佳ちゃんがどう思うかが、やっぱり怖かった。


「びっくりはしたけど、頭のなかでぴたりとハマる部分もあるっていうか。そんな意外な感じはしないね」

「そ、そう?」

 枝豆をつまむ手を休めずに、穂佳ちゃんは言う。

「趣味うるさそうだもん、岸さん。うるさいなりに、細かいなりに、結衣ちゃん見ててびびっとくるものがあったんでしょ」

「うるさくも細かくもないってば。なんで皆、岸さんのことをそう言うんだか」

「え。皆が言うんならうるさくて細かいってことでしょ。決定でしょ。……あ、バカなことを言っているあいだも、隣の女はポジションを譲りません」

「なになに?」
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