さよなら、片想い
「どうする? 邪魔する?」

 空になった枝豆と入れ違いに唐揚げが到着し、穂佳ちゃんがレモンに手を伸ばす。

「かけていいよ」

「じゃなくて。あっちの彼氏のほう」

「今日は顔が見たかっただけだから」


 半分は本当で、半分は嘘だ。できるものなら、私が岸さんの彼女なんだとあの女の人を牽制したい。
 だけどこちらの思いこみかもしれない。好いているようにみえただけかもしれない。

 仕事の仲間だから仲良くしたいというのはわかる。岸さんがうまくやろうとしているのを邪魔するのなら、やってはいけないようにも思う。


「スマホで合図しちゃえば? ここにいるよって」

 穂佳ちゃんがにやりと笑う。

「協力してくれる?」

「勿論」

 中ジョッキを持って、穂佳ちゃんと頭を寄せて、背景にビアガーデンホールの丸い照明を写りこませて自撮りをした。更に画像編集アプリのペンでもこもこと囲ってみる。

「いいじゃんいいじゃん」

 穂佳ちゃんも調子に乗って『枝豆ウマー』などと落書きをした。
 画像を送るとすぐに岸さんは気づいたようで、周りを見まわしている。その横で、例の女の人が岸さんのスマホをのぞきこんでいた。
 ようやく岸さんがこっちを向いた。
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