さよなら、片想い
 翌日になるともっと冷静になっていた。

 私の態度は、会社の先輩相手にふてぶてしいにも程があった。
 岸さんに会ったら謝罪しないといけない。
 あんなに醜態をさらしたあとだけに、会いたくないけれどーー。


 山ほどあった注文商品の描きが終わると、部署内は打ち上げでもしたい雰囲気に包まれた。
 私はというと、いよいよ例の振袖に着手しなくてはならないかとドキドキしながら、使い終わった筆や染料容器を洗っていた。

 席に戻るころには、打ち上げの話はいつのまにか岸さんへの愚痴に変わっていた。

 描いている最中に背後から黙って反物を観察してなにも言わずに去っていくのはやめてほしいとか、毎回使う色数が多すぎるとか、納期の厳しい注文品が多いとか。
 甘いものの差し入れだけではみんなの不満は収まらなかった様子。

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