さよなら、片想い
　宏臣に呼びだされたことを打ち明けた。
　婚約者とのなれそめを聞いて勝手に傷ついて、傷ついているのだと伝えることもできなくて、変わらぬ友達であろうとしている。呼びだされたことで、ひょっとしたらまだ自分にもチャンスがあるのでは、と期待していた自分に気がついたことも。

　でも、一番ショックだったのはーー。


「彼が結婚しても、今までどおりこっそり想っていくつもりでした。片想いが消えてなくなるまでは。でも」

　宏臣らしい悪ふざけも好きだったのに、いつのまにか好きだと思えなくなっていた。
　変わらないはずだった私の気持ちが、変わってしまっていた。
　簡単に変わるような軽い気持ちだったのかな。
　悲しい。


「でも？」

　なんでもないです、と首を横に振った。

「もう、いいんです。とりあえず奢らせたので。もう手描きのお礼の名目で声がかかることはないと思うから」

< 47 / 170 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop