さよなら、片想い
冷えきった指先に息を吹きかける。
岸さんからもらったハンドクリームを出して塗った。
「岸さん岸さん、これ、すごくよかったです」
「そう。あ、それ」
ベンチから動かなかった岸さんが寄ってきて、右手でジェスチャーする。
「伸ばす向きが違う。横のほうがいい」
「横とは」
「この向き。皺に沿って、塗る」
ちょっと失礼、と断ってから私の手を取ると、岸さんは指先に向かってではなく手の甲の皺の向きに、横にクリームを伸ばした。
「詳しいですね」
「小さいころ、アトピー性皮膚炎に悩まされて。母がよくこうしてくれた。皺に逆らわずに塗るんだって。身体に塗るときもそう」
まじまじと岸さんの顔を見上げた。途端に岸さんが一歩離れた。手も放した。
「え、なに遠ざかってるんですか。まだクリーム残ってるんですけど。ほら、ほら」
「あとはできるだろ」
ぷいっと横を向いてそんなことを言う。
岸さんからもらったハンドクリームを出して塗った。
「岸さん岸さん、これ、すごくよかったです」
「そう。あ、それ」
ベンチから動かなかった岸さんが寄ってきて、右手でジェスチャーする。
「伸ばす向きが違う。横のほうがいい」
「横とは」
「この向き。皺に沿って、塗る」
ちょっと失礼、と断ってから私の手を取ると、岸さんは指先に向かってではなく手の甲の皺の向きに、横にクリームを伸ばした。
「詳しいですね」
「小さいころ、アトピー性皮膚炎に悩まされて。母がよくこうしてくれた。皺に逆らわずに塗るんだって。身体に塗るときもそう」
まじまじと岸さんの顔を見上げた。途端に岸さんが一歩離れた。手も放した。
「え、なに遠ざかってるんですか。まだクリーム残ってるんですけど。ほら、ほら」
「あとはできるだろ」
ぷいっと横を向いてそんなことを言う。