さよなら、片想い
 えー、と私は不満の声を上げる。

「マッサージされているみたいで気持ちよかったのに」

 えい、とその残ったクリームを岸さんの手になすりつけた。

「あとはできるだろ」
「俺のモノマネ? ……似てない」
「そうかな、いいセンいってると思うんだけどな」


 口ではああ言ったものの、塗ってもらったから今度はこっちの番、と私は岸さんの手を取った。
 驚いたのか、岸さんの手がぴくっと動いた。
 振り払われはしなかったので、そのまま続けた。
 岸さんがしてくれたように指の腹でクリームを広げる。
 私に出したクリームの余り分をつけただけなので、すぐになくなった。

「たりない」


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