さよなら、片想い
6.私、撮りますよ。
 金曜日は夕方から社の忘年会だった。
 ホテルの宴会場を借りて行われる大掛かりなものだ。
 社員の大半は着物で参加することになっていて、私も例外ではなかった。
 販売店舗には社内イベントのときに貸し出しできるものが相当数あって、クリーニング代のみで借りられることになっている。

 私はピンク地に暗い茶系のぼかしが入った振袖にした。
 白い芍薬の花が華やかで、一緒に選んでくれた販売店舗のかたも似合うと言ってくれた。
 和装は支度に手間がかかる。
 業務は午前中で終わりとなり、それから美容院だの着付けだのと忙しかった。
 それでも土曜日の休日を潰して宴会するよりいいよね、と移動用にチャーターされたバスの車内でも皆の表情は晴れやかだ。


 バスがホテルの敷地内に入る。順に下りて、宴会会場に入るなりくじびきを引かされ、番号の席へ移動する。

 同じ部署の先輩と意匠部の部長、検査部や営業部の人が同じテーブルだった。
 他に近くに知っている人は、と見渡すも、みんなばらばらになってしまっていた。
 そういえば今日は岸さんの姿も見ていない。

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