1日だけの想い夢
それからと言うもの、学校帰りには必ず山に向かい、ミキと薫と3人で遊んで過ごした。休みの日もお弁当を持って、山へと向かった。
ミキはいろんな事を知っていた。木々や草、花の名前、山にいる昆虫や動物、小さな洞穴の場所。この山の妖精だというのを、時雨はすぐに信じた。
仲良くなるのに時間がかかると思っていたが、ミキの人懐っこさや明るい性格のおかけで、時雨はすぐに打ち解けたのだった。
虫採りをしたり、動物の絵を描いたり、川遊びや雪遊びをした。毎日クタクタになるまで遊んでいた。
魔法のような力があるチセだったけれど、遊ぶ時はほとんど使わなかった。薫や時雨が怪我をした時に、薬草を出してくれたり、危険な動物や昆虫が近づいてきたりした時だけ、力を使ってくれた。だから、薫も時雨も彼に「魔法を見せて」とは言わなかった。ミキと一緒に遊べるだけで楽しかったので、気にもしていなかった。
そんなある日。
数十年に1度の流星群が見られると、ニュースで話題になっていた。
「今夜だね、流星群!」
薫が言うと、ミキは不思議そうに「流星群ってなに?」と聞いてきた。手には、薫が自宅から持ってきたたい焼きが握られていた。
仲良しの友達がいると知り、薫や時雨の母親はおやつを3人分準備してくれていた。けれど、大人にはミキが妖精だとは話していない。ミキが「大人には言ってはダメ。教えた途端、君たちは僕が見えなくなるよ」と、言われていたため、その約束を守っていた。
「流星群っていうのは、流れ星が沢山見られるんだ」
「そうそう!お家からも見れるかな~」
「流れ星か。だったら、夜もこの森においで。この町の中で、ここが1番綺麗に見えるし、星空に近いんだよ」
それを聞いて、薫と時雨はこっそり家を抜け出す約束をした。