1日だけの想い夢
「おまえだって、薫が好きだっただろ?見てればわかるんだからな。とぼけてもダメだ。おまえが薫を諦めるなら、俺が貰う」
「……時雨。僕は妖怪。あやかしだよ?薫と恋人になんて……」
「薫はそんな事気にする奴じゃないだろ?!あいつは、そんな奴じゃない」
「……時雨……」
「それに、俺だっておまえに負けたくないってずっと思ってたんだ。ミキは友達だけど、ライバルでもあるって……だから、おまえが諦めるなら、あいつは俺が恋人になってもらう!」
そこまで一気に言葉を発したからだろうか。それとも、ここまで走ってきた時の疲れが、まだ呼吸を乱しているのだろうか。
どちらかわからないけれど、時雨は、はーはーっと深い呼吸を繰り返した。
時雨の言葉を正面から受け止めていたミキは、目を大きく開けて、口もポカンと開いていた。それぐらい、時雨の言葉に驚いたのだろう。
時雨は、ミキが自分が薫を好きだとバレていた事に驚いているのだと思った。そのため、少し得意げな笑みを浮かべてミキを見ていた。
すると、ミキは肩を小刻みに揺らし始めた。時雨はミキが泣いているのかと思い、思わずミキに向かって手を伸ばした。すると、そうではなかった事がすぐにわかった。
「くくくっ…………は、はははははっっ!!」
「!!」
ミキはお腹を抱えながら、思い切り笑い始めたのだ。目尻には涙を浮かべ、呼吸が出来なくなるぐらいに笑い転げていた。
突然笑い始めたミキに、時雨はギョッとしてしまう。