ねぇ・・君!
赤提灯のおでんと夫婦のぬくもり
この日、秋から冬へと
季節が変わろうとしていた。
この時、英明と清香は
夜の街並みを二人で散策していた。
この時に、英明は赤提灯がある
おでん屋さんを見つけたのだ。
「清香、おでんを食うか。
温かいものを食べるのもいいな」
「あなた、日本酒が飲みたくなったの?
今の季節だと熱燗で飲みたいって
顔にかいているわよ」
「あはは、バレちゃったか。
そうなんだよ、この寒い時は
熱燗におでんが最高の贅沢だよ。
とにかく、店に入ってみるか」
英明と清香は、赤提灯のお店に
入っていった。
「いらっしゃい。オッス、清香。
久しぶりだな」
「お久しぶり、雅之くん」
そう、このお店は清香の幼なじみが
大将となって経営しているのだ。
「清香、優しい人と一緒になって
よかったな。おまえのために、
命がけで守った人だ。
きっと、幸せになるよ。
えっと、英明さんでしたよね?
あなたとは、清香との結婚式で
一度お会いしましたね。
僕は、清香の幼なじみで吉岡雅之です。
この店は、おやじの代から
やっている小さなおでん屋です」
「そうなのか、おでん屋さんがあるから
入ってきたが、キミの店だったんだな」
「清香が、結婚が破談になった時は
大変でした。破談になってから
僕が清香の様子を見に行ったんです。
ところが、清香は生きていく希望が
なくなったのか自宅で睡眠薬を飲んで
自殺未遂をしたんです。
それで警察と救急車を呼んで
病院へ連れて行って寸前のところで
意識を取り戻したんです。
このことは、元婚約者に伝えました。
しかし、清香のお父さんが
清香の面会を断ったのです。
破談にした張本人が、
どの面を下げて会えるんだ。
二度と来るなと言ったんです。
実は、清香の元婚約者には
清香との接見禁止を弁護士から
伝えられたのです。
だから、英明さんを刺したのは
清香と復縁をしたいがために
殺ったのだと思うのです」
思えば、清香のストーカーとなった
清香の元婚約者は、清香との結婚が
破談となったことで浮気相手を捨てた。
しかし、浮気相手が元婚約者をナイフで
切りつけて自分も死のうしたことは、
当時の勤務先で起こった事件となった。
このことで、元婚約者と浮気相手は
懲戒解雇となったのはいうまでもない。
そして、舌の根も乾かぬうちに
清香に復縁を迫ったが断られた。
断られた理由に、清香に英明という
恋人ができたことだった。
その理由から英明を逆恨みしていたと
考えられても不思議ではない。
「清香が、英明さんと結婚したことは
嬉しかったです。清香が、英明さんの
職場の仲間たちから慕われていることを
聞いて安心したんです。
僕が清香に望むのは、これから
英明さんと幸せになって暮らしてほしい。
それだけで十分だと思っています」
かつての清香が、結婚が破談となり
立ち直るのに時間がかかったが、
英明という恋人ができたことで
清香の心から元婚約者の影がなくなった。
そして、今は清香に
英明との新しい命が育っている。
英明は、かつて寿子と結婚したが、
性格の不一致で離婚をした。
そして、離婚をしてから3年後に
清香と再婚をした。
「清香、たくさん食べて
元気な赤ちゃんを産めよ」
大将は、そう言うと清香に
たくさんのおでんを入れて
出してくれたのだ。
英明には、おでんの他に熱燗をつけた。
熱燗とおでんは、最高の贅沢。
そう言った英明は、かなりご満悦だった。
今夜は、ほろ酔いになってもいいかなと
清香は、英明を見てそう思っていた。
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