ねぇ・・君！

恵方巻で占う夫婦の未来

「今日は、節分だな。今年も
恵方巻をつくったのか」
「今年１年が平穏無事に過ごせるように
清香と一緒に恵方巻をつくったのよ」
「お母さん、今年の方角はどこ？」
「その都度、方角にこだわるな。
我が家は、我が家の幸せを願って
恵方巻を食べるんだ。
寿司屋の言うとおりにしていたら
きりがないだろう」
この時、清香の実家で夕飯を食べていた。
ちょうど、この時節分とあって
夕飯に用意をしていたすき焼きと
清香と清香の母が手作りでつくった
恵方巻が出されていた。
節分の日に恵方巻を食べるのは、
清香の父が言うようにお寿司屋さんが
考案したものであるが、
今では節分の日に恵方巻を食べるのが
当たり前になっていた。
清香は、料理が上手で新婚の時は
清香の手料理が英明の楽しみだった。
そして、清香がいることで
幸せを感じたのは言うまでもなかった。
「実はだな、オレは清香と
婚姻届を出したんだ」
この時、茶屋町オフィスにいる
恭輔、沙織、雪恵、香菜、
孝之、夏子に英明は伝えていたこと。
そして、清香の仕事の引き続きとして
優子が本社である南森町オフィスから
人事異動で入ってきたことが
走馬灯のように思い出されていた。
その優子であるが、かねてから
結婚を約束していた男性との
結納が整って今年の４月に
結婚式を挙げることになった。
結婚式の招待状は、英明と清香の連名で
送られてきたが、清香が出産のため
英明が一人で出席をすると返事を出した。
これまで、清香の後任として
頑張ってくれた優子に英明は
幸せになってほしいと願っていた。
「今年も家族が幸せになるように
恵方巻を食って厄払いをするぞ」
清香の父はそう言うと、
恵方巻を一本食べていた。
それと同時に家族がそろって
恵方巻を食べていた。
その輪のなかに、英明がいたのは
言うまでもなかった。
英明は、清香と生まれてくる
子供のために恵方巻を食べていた。
これから、清香と子供のために
一家の主として頑張っていこうと
そう思ったのは言うまでもなかった。
「もうすぐ、俺たちに孫が生まれるな」
「そうですね。私たちもそうですが、
英明さんのご両親も楽しみにされて
いますよ。英明さんのご実家では、
内孫は初めてですからね」
そう、英明の家は
まだ内孫がいないだけに
英明と清香の子供が生まれるのを
楽しみにしていた。
どちらの家も初孫になる
英明夫婦の子供が
無事に生まれてくるのを
楽しみにしていた。
「あなた、この子はみんなに
喜ばれて幸せな子ですね」
「そうだな、オレの家では
待望の内孫だからな。
清香、元気な子を産んでくれよな」
この子は、みんなに喜ばれて幸せな子だ。
そして、この子が元気に生まれてくる。
清香は、そんな日を
指折り数えて待っていた。