ねぇ・・君!
探偵事務所からの手紙
日曜日のある日のこと。
清香は、恭輔や孝之そして
恭輔の同期入社の営業部員の協力で、
新居になる阪急線の蛍池駅にある
マンションに移ることになった。
孝之の家が、運送会社を経営していることから
引っ越しの荷物を運ぶためのトラックを
無償で提供をしてくれたのだ。
「どうだ、荷物の積み込みは終わったか?」
「だいたいの荷物は、積み込みましたね。
あとは、パソコン関係の運び込みは、
僕の家の運転手がトラックで運ぶそうです」
「孝之、おまえのお父さんに
トラック代と運転手さんの
ガソリン代と日当がわかば、
請求書を書いておいてほしいと
伝えてくれないか?」
「そう言うと思いました。
実は、僕の父が言ったんですよ。
日頃、僕がお世話になっている
上司の頼みだから、
快く引き受けるのが
礼儀だと言ってました。
トラック代のことは、
無償で提供をするということです。
ただし、うちの社員が
休日出勤で運転に来たからには、
社員の日当とガソリン代で、
かまわないということでした」
「すっかり、世話をかけてしまったな。
孝之、お父さんに便宜を図っていただいて
感謝をしていると伝えてくれ」
「とにかく、清香さんが新居で
心が穏やかになって暮らせれば、
僕たちは万々歳ですよ」
そうしたなかで、
清香の引っ越しに協力してくれた
恭輔をはじめ
恭輔の同期入社の営業部員と
孝之に感謝する英明であった。
そして、清香の引っ越しが
無事に終わって
一息ついた時のことだった。
英明は、もう一つ
やり残したことがあった。
清香を避難させたが、
ストーカーと化している
史生の存在が残っていた。
そんな時だった。
「長野英明様にレターパックです」
と郵便の配達員が
オフィスにいる英明を呼んでいた。
「私ですが、何か?」
「南森町の島津探偵所からお届け物です。
恐れ入りますが、
フルネームでサインをお願いします」
「わかりました、
ありがとうございます」
英明は、郵便配達員に
受け取りのサインをした後
自分のデスクに戻って、
レターパックを開けて
調査の依頼をしていた
書類を読んでいた。
探偵に依頼をしたことは、
史生の身辺の調査であった。
調査の内容では、
史生は職場を懲戒解雇されてからは、
職場を転々としている
生活をしているとのことであった。
そして、清香の後輩であった
本宮三千代の自殺未遂を棚に上げて
清香に復縁を迫っていることがわかった。
これだけの証拠があれば、
史生と戦うことができる。
英明は、そう確信していた。
最近は、清香が引っ越しをしたのか
わからなかったために
史生が、清香を
待ち伏せをするために
オフィスの前に
張り付くようになっていたのだ。
そのため、営業で戻ってくる
沙織と香菜が、夜に帰るのが怖い
と言うようになっていた。
そこで、英明はイチかバチかの賭けに出た。
清香を含めたオフィスの仲間を守るために、
史生と戦う決意をした。
そのことは、清香にメモ書きで伝えていた。
「オレがいいと言うまで、
オフィスから離れるな。
これから、決着をつけてくる」
英明は、これから
何をしようとしているのだろうか?
一抹の不安を感じていた清香であった。
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