その青に溺れる
再び検索を始めるが、今度は彼が席を立ち此方へ足を向ける。
それは一日一回の帰宅を示していて、一緒に居る自分への配慮だと分かったのもつい最近の事。
重い腰を上げて立ち、ドアが開いた瞬間、身体ごと持って行かれ、目の前には何とも綺麗な肌をした男性の横顔があり、その先に間の抜けた彼の顔が見える。
自分でもどういう状況に居るのか分からず、辺りを見回した。
ソファーの上、男性の膝に乗った自分が居て、彼が見守っている状況だろうか、
否、きっと違う、予想出来るのは『なにしてんだコイツ』のほうが近い。
足が縺れたのか、と思いながら男性に「すいませんでした」と声を掛けて立ち上がり、姿勢を正した所で手首が掴まれ、彼のほうを見たが、どうやら違う様子。
その手を辿る前に口が開く。
「あの……手……」
「あ、ごめん、つい」
そう言って手を離し、指を撫でながら此方を見てくる男性に鼓動が跳ねる。
優しい目をし、じっと見つめながら少しだけ口角を上げて笑みを零す顔、それは俗に言う[イケメン]の上位に相当した。
思わず『この人を好きになれば良かった』などと考えていると彼に声を掛けられ、一時の甘い想像は儚く散らされる。
「行くぞ」
「はい、すいません……」
「またね」
ただ一言だけなのに落ち着いた声で、去り際までも男性は素敵だった。